父と私の好きな人
ブログを始めようと思った時、一番書きたかったのは父とのことでした。
父は多くの人に愛されたバイク雑誌の編集者でした。そんな父をいつまでも忘れて欲しくなくて、忘れたくなくて小さな思い出も文字に残しておきたいと思ったからです。
また、思い出とは別に考えることもたくさんあります。
死んでしまった今となってはたらればのお話になってしまいますが、それでももし、成人式の振袖を見せることができたら。結婚式に呼べたら。一緒にお酒を飲みに行けたら。私の未来の子供と会わせたら。
暇な時にふとそんなことばかり考えてしまうくらい、父と叶えたい未来がたくさんありました。
そんな空想も全て文字に残して、父に手紙を書くような気持ちで綴っていきたいと思います。
私には今好きな人がいます。彼氏です。
彼氏なんて、お父ちゃん拗ねるかな。絶対拗ねるなあ。
彼は優しくて、サッカーが上手で、タッキーの若い頃に似ているかっこいい人です。
でもそれだけじゃなくて、素直でまっすぐで、家族を大切にしていて、出逢って6年になる今もずっと変わらず私の隣に居てくれています。
初めて私の家に上がった時、写真の中の父に向かってお邪魔しますと会釈をしてくれました。初めて一緒に父のお墓参りに行った日は、私よりも丁寧にお墓を磨いてくれました。
私と彼が出会ったのは14歳。すでに父が亡くなって4年経っていました。
もし今父と彼を会わせることができたら、とよく考えます。
私は小さい頃から絵を描くことが好きでした。どんな絵を描いて見せても、天才だなあと笑って褒めてくれました。
父が褒めてくれなかったのは一度だけ。
未来のウェディングドレス姿の自分を描いて見せた時だけは、そんなの100年早いんだと言って子供のように拗ねてしまいました。幼い私でもわかるくらいわかりやすく拗ねる父がおかしかったのを覚えています。
そんな父だからきっと始めは拗ねたことでしょう。
拗ねた父と拗ねられた彼の間に入って、機嫌を取るのも大変だったのかな。
そんな幸せな苦労ならしてみたかったように思います。
そしていつか、仲良くお酒を飲む父と彼を眺めながらキッチンに立って、二人のためにおつまみを作ってみたかった。
始めは渋々だった父が徐々に彼を認めてくれるところも、緊張しながらも一生懸命父と話してくれる彼も、そんな瞬間一つ一つを全部、この目で見てみたかったです。
父は母に、もし将来私が男の人を家に連れてきたら、自分のバイクの後ろに乗せてサーキットを走って、泣き言を言わなかったら許してやろうなんて話していたこともあったそうです。
その話を冗談で彼にすると、富士急ハイランドのアトラクションでバイクのスピード感を疑似体験できないかなんて言い出しました。
私が絶叫アトラクションが苦手なのでまだ二人で富士急に行ったことはありませんが、それでも、彼にとっては一度も会ったことのない天国の父のそんなエピソードも真剣に考えてくれて、一生懸命亡き父と向き合おうとしてくれる彼の気持ちがとても嬉しかったです。
父がいなくなってすぐは寂しくて毎日のように夜中に起きて泣いていた私だけど。
今でもお母さんと激しく喧嘩をする日もあるし、バイトでミスをして落ち込んだり、何もかも嫌になって小さい子供のように声をあげて泣きたくなる日もあるけれど、こんなにも素敵な彼に出逢えて、支えられて毎日生きています。
すぐふざけるところ。
いつもはちょっと口が悪くて、でも私とはすごく優しく話してくれるところ。
夢中になると子供みたいに無邪気になるところ。
なんだかんだ言いながらも私のわがままを笑って許してくれるところ。
もちろん彼は彼だけれども、父の代わりに来てくれたんじゃないかなんて思えるくらいそんなところが本当によく似ています。
その彼と将来ずっと一緒になるのかは、今はまだわからないけれど。
私がいつか本当にウェディングドレスを着る時は、父もきっと素直に喜んでくれたことでしょう。ドレス姿で父と一緒に歩くことはもう叶わなくても、私はきっとその日も天国の父を想いながらバージンロードを歩いて、両親への手紙を読んで、心からお父ちゃんの娘に生まれてこれて良かったと、そう思いながらお嫁に行くんだと思います。
幼い時も、今も、これから大人になってお嫁に行く日がきたとしても、どんな時でも父を大好きなことに変わりはありません。
こうして叶わないたらればのお話を考えることだって、虚しさがあふれて考えるわけでは決してありません。
大好きだから、今も私の心にずっといるから、もし、と考え始めると楽しくて止まらなくなってしまうのです。
それくらい楽しい人生を今送れていること、考えるだけで楽しい未来がたくさんあることが何より幸せだということは、最後に父が教えてくれたことでした。
大好きな彼、優しい友達。素敵な人たちに囲まれて私は本当に幸せです。
私と彼のことも、どうか空から見守っていてね。