お父ちゃんが見ていた世界
随分とご無沙汰してしまいました。
前回書いた文を書くお仕事は、問い合わせてみたところいろいろとお互いの希望に沿わないところが多く、見送ることになりました。
また機会があった時に、挑戦してみたいと思います。
昨日実家に寄ったところ、私の二十歳を目前にして思い立った母が小さい時のビデオを現像していました。久しぶりに家族で小さい頃の動画を見ました。
どのビデオも撮っているのは、お父ちゃん。
姿は映っていないけれど、どの映像もそれは生きていたお父ちゃんが見た世界でした。そしてそこには、あからさまにデレデレした声で私に話しかけるお父ちゃんの声もたくさん入っていました。
久しぶりに声を聞きました。
こうやっていつも私の名前を呼んでいたんだ、こんなふうに見えていたんだ、と。
4歳の運動会の、徒競走の映像。
動きもどんくさくて、何故か必要以上にニコニコしながら最下位でゴールした私の姿は、お父ちゃんがアップで写しすぎてぶれぶれでした。
ふっ、と、漏れたお父ちゃんの笑い声が、どれだけ私を可愛がってくれていたかそれだけで伝わるような、優しい声でした。
弟とお母さんとお弁当を食べる私は笑顔でカメラを見ていて、ビデオの中の世界が、お父ちゃんが見ていた世界があまりに幸せそうで、幼い自分が羨ましくなりました。
そのビデオに残っている運動会の日は、お父ちゃんの締め切り明けすぐで、ほとんど寝ないで来てくれた日だったそうです。
私が覚えている数少ないお父ちゃんと過ごした時間は、私たちと過ごしたいと思ってくれていたお父ちゃんの努力の上であった日々だったなんで、その時は知りませんでした。
たくさんビデオを見て、家族で笑って、お父ちゃんの声を久しぶりに聞いた昨日はとても幸せでした。
いつかお父ちゃんからも、思い出話を聞ける時が来て欲しいです。